カテゴリ : RIDERS CLUB

最終更新日 : 2024年05月23日

RIDERS CLUB 2023年 05月号 掲載 【記事】好きだから、こだわりたい 「Alth ブレーキディスク」

好きだから、こだわりたい

バイクの愉しさはスロットルを開けて加速することにあるのは当然だが、アルトのブレーキディスクは、減速する愉悦があることを教えてくれる。

PHOTO / Y.ARAKI TEXT / T.YAMASHITA

問 / モトコルセ TEL046-220-1611 https://www.motocorse.jp

卓越した冷却性能が理想のブレーキングを実現する

停止直後のブレーキディスクは、素手で触れないほど熱くなっている。ブレーキの仕組みを物理学的にいうと、回転体の運動エネルギーを熱エネルギーに変換することで回転体を停止させる現象、となる。

摩擦は回転エネルギーを熱エネルギーに変換するための手段だ。つまり、ブレーキパーツはバイクの速度を落とす結果として熱くなっているのではなく、熱くなったからこそパイクの速度が落ちて停止できるのだ。ゆえに、ブレーキのキャリパー、パッド、ディスクは、高温を発生させるためのパーツと言い換えることもできるが、熱過ぎるとプレーキの性能は劣化する。それを防ぐには、ディスクの熱容量を増やすか、放熱(冷却)性を高めるか、いずれかの対策が必要になる。

アルトの「スーパーペントブレーキディスク」は、後者の方法で過熱を防ぐシステムだ。一般的にバイクのブレーキディスクは、ソリッドと呼ばれるステンレスの1枚板だが、この製品は2枚重ねたディスクの隙間に通気経路を設けた構造を持つぺンチレーテッドタイプ。しかもディスクの回転によって積極的に大量の走行風を取り込む設計となっており、内部をフレッシュエアが吹き抜けることで空冷効果を高めるのだ。スーパーベントブレーキディスクは、特殊炭素クロムステンレス鋼に3時間におよぶ熱処理(一般的な量産ブレーキディスクでは5分程度)を施している。このため素材組成の中心まできっちりと均一化され、高温時でも安定した性能と耐摩耗性を発揮。同社製品ならではのコントロールラブルなレバータッチと、絶妙な効き具合を実現するアウターディスクとなっている。CNC切削された高精度なインナーフランジと相まって、ハードブレーキの連続でも優れた性能を維持してくれるのだ。構造が複雑なぶん重量がかさむように思われがちだが、ディスク厚は6mm、Φ330mmの重量は実測で約1.6kg。同社従来品より約15%軽く、他メーカーのソリッドディスクと比較しても軽量な部類。バネ下重量の軽減によりサスペンションの性能が引き出せ、軽快なハンドリングも実現する。

冷却性性能が高くて軽量なベンチレーテッドディスクの恩恵は、サーキットでも公道でも体感できる。ブレーキレパーを握るたび、アルト社の技術の粋と、物づくりに込めたパッションを感じられ、ライディングの愉悦はより深まるのだ。


写真補足テキスト

重ね合わせた2枚のディスクは中空構造となっており、ディスクの回転や走行風によってフレッシュエアが通過することで放熱効果を高めて冷却する。

右 : アウターとインナーの接続はセミフローティング方式を採用。左 : 超々ジュラルミン7075を素材とするインナーもCNCで削り出し、優れた精度を実現している。下 : アウターはCNCで削り出した後に36時間の熱処理を行い、素材組織を均一化。さらに精密検査を施している。

ALTH スーパーベント ラウンド ブレーキディスク For DUCATI MULTISTRADA V4S

フロント Φ330mm : 18万7000円(片側)

リア Φ266mm : 18万7000円