カテゴリ : RIDERS CLUB
最終更新日 : 2024年05月08日
RIDERS CLUB 2021年 3月号 掲載 【記事】bimota TESI H2

New Model Shooting
bimota TESI H2
カワサキの資本参加による新生ビモータの第1弾「TESI H2」が日本上陸。ビモータが長きに渡って育んだハブセンターステアリングと怒涛のパワーとトルクを誇るスーパーチャージドエンジンが合体!。何者にも似ていない唯一の存在が、バイク趣味の未来を照らす。
PHOTO / K.MASUKAWA TEXT / K.ITOH 問 / モトコルセ TEL 046-220-1611
P.マルコーニの TESI哲学がカワサキの協力で結実
遂に日本上陸を果たしたビモータ TESI H2。異彩を放つフロントスイングアームはもちろん、鋭角的で大きなフロントカウルとウイングの迫力に圧倒されるが、中央に備わるヘッドライトにカワサキへの強いリスペクトを感じる…。
ビモータ社は、古くからのライダーには言わずと知れたイタリアの有名ブランド。制始者のひとりマッシモ・タンブリーニが、趣味のバイクレース用にオリジナルフレームを製作し、その類い稀なるハンドリングが世界に名を馳せるコンストラクターとなる始まり。日本製の高性能エンジンを搭載した公道モデルはエンスージアスト垂涎のマシンとなった。
そんなビモータに1983年に合流したエンジニアが、現社長であるピエルルイジ・マルコーニ。ボローニャ大学に在籍中に、バイクのフロントサスペンションとして一般的なテレスコピック式フロントフォークに変わるハブセンターステアリングシステムを考案した。カワサキのGPZ550の4気筒エンジンを使用してプロトモデルも製作し、卒業論文として発表。操舵と衝撃吸収を兼ねるテレスコピック式フロントフォークに対し、ハブセンターステアリングはこの二つの機能を切り離したシステム。衝撃吸収(路面追従)は多くのリアサスペンションと同様にスイングアームで受け持つ。そして操舵機能は、フロントホイールのハブの内部の中心にステア軸を配置。これがハブセンターステアと呼ばれる理由だ。
織密で大胆なアルミ切削とカーボンが織りなす未知の領域への挑戦
この構造により、ブレーキング中でも外乱(路面の凹凸など)を吸収しつつ過度な姿勢変化(ピッチング)を抑制し、ハンドリングに影響を及ぼさず、前輪のグリップをしっかり引き出せる。さらにハブセンターステアリングは、バイクがリーンする際のロール軸の傾きが極めて低いため、素早い向き変えと安定感を両立できる。しかしテレスコピックフォークより複雑で特殊な構造ゆえ、メリットの大きさは理解されつつも、このシステムを採用するバイクは、ごく一部のレーシングマシンやカスタムバイクに限られていた。
それを市販車の世界に持ち込んだのがマルコーニであり、ビモータが1990年のケルンショーで発表した、ドゥカティ 851の水冷L型2気筒エンジンを搭載する「TESI 1D」。そのTESIは、既存のフレームを持たない、というのも大きな特徴で、エンジンそのものを車体の剛体として使い、前後のスイングアームはエンジンを挟み込んだプレートに締結する構造を取る。
そしてビモータはTESI 2D、TESI 3Dとハブセンターステア車を進化・熟成させてきた。…が、小規模メーカーゆえに、過去にも何度か経営危機があり、近年も2018年中頃から休業状態だった。そのビモータに資本参加を表明したのが日本のカワサキ。そして2019年のEICMAで、新生ビモータ第一弾として発表したのがTESI H2である。
川崎重工の総力を結集したスーバーチャージドエンジンを提供したのだ。いわゆる後付けの過給機ではなく、スーパーチャージャー装備を前提に設計したエンジンは、驚異的なパワーとトルクを完璧なまでに調教。そのエンジンを剛体として活用し、前部左右を挟むプレートにフロントスイングアームを締結。そしてクランクケース後部に複様な形状のアルミブロックを固定し、そこにリアスイングアームのピボットや、前後ショックユニットのマウントを設ける。ライダーが跨るシートおよびカウル部分はカーボン製のモノコック構造で、これもリアブロックに直接締結。ルックスこそ大きく異なるが、設計思想や基本的なレイアウトはTESI 1~3Dを踏襲している。
しかし制御系にはトラクションコントロールやクイックシフター、さらにはスマートフォン接続機能までNinja H2同様の電子デバイスをフル装備。ドゥカティの空冷L型2気筒を搭載するアナログ的なTESI 3Dとは好対照といえるだろう。
このTESI H2を日本国内で販売するのは、創業時から深くビモータと関わり、2006年からビモータジャパンとして活動するモトコルセ。ハプセンターステア機構はメンテナンスも既存のバイクと異なる部分が多いが、ビモータと強力なリレーションを持つだけにアフターサービスは万全。また世界限定 250台の希少モデルですでに予約も入っているが、現時点では購入可能という。そして次号では、試乗インプレッションを掲載予定しているのでご期待頂きたい。
■ TESI H2にはクローズドコース用のARROW製チタンフルエキゾーストの他、前後メンテナンススタンドが同梱される。
■ 1:ラジエターはフロントカウルの下面側に移設。モトコルセは納車の時点ですべての販売車両にコアをガードするチタニウムプロテクションスクリーンを装着する。左ウイングの下に、スーパーチャージャーに外気を導く吸気口を配置。2:ラムエア加圧時に242psを発揮するスーパーチャージドエンジン。仕様はNinja H2に準じる。3:エンジン後方に2本並んだオーリンズTTXショックユニット。右がリア用で、左はFスイングアームから伸びたロッドとリンクを介したフロント用。
■ ダッシュパネル上のシリアルが限定250台の証。日本初上陸車はNo.14。
■ メーターはNinja H2と共通。フィークを支える必要のない小さなトップブリッジにカーボンバーのセパレートハンドルをセット。外装パーツはインナーカウルも含めすべてカーボン製だ。
SPECFICATIONS
エンジン形式 | カワサキ製 スーパーチャージド水冷4ストローク並列4気筒 |
バルブ形式 | DOHC4バルブ |
総排気量 | 998cc |
ボア×ストローク | 76.0 x 55.0mm |
圧縮比 | 8.5:1 |
最高出力 | 231 (242) ps / 11500rpm ()内はラムエア過圧時 |
最大トルク | 14.4kgf・m / 11000rpm |
フレーム | CNCアルミニウムフロント / リアスイングアームマウンティングプレート |
ステアリング | ハブセンターステアリングシステム |
キャスター/トレール | 21.3°/ 117mm |
サスペンション | F=オーリンズTTX フルアジャスタブルショックアブソーバー 油圧リモートプリロードアジャスタ || R=オーリンズTTX フルアジャスタブルショックアブソーバー 油圧リモートプリロードアジャスタ |
タイヤサイズ | F=120/70ZR17 || R=200/55ZR17 |
ブレーキ | F=ブレンボ STYLEMA P30 x 4 キャリバー / Φ330mmダブルディスク || R=ブレンボP2-34キャリパー / Φ220mmシングルディスク |
全長×全幅×全高 | 2074 x 770 x 1155mm |
ホイールベース | 1455mm |
シート高 | 840mm (+1Omm) |
燃料タンク容量 | 17L |
車両重量 | 207kg(乾燥) |
主な電子装備 | コーナリングマネジメントファンクション KCMF || インテリジェントアンチロックブレーキシステム KIBS || エンジンブレーキコントロール KEBC || ローンチコントロール KLCM || トラクションコントロール KTRC || クイックシフターKQS || フルカラー TFT 液晶スクリーン || 搭載インストルメントパネル || オーリンズ製電子制御ステアリングダンパー || スマートフォン接続機能 |
カラー | カーボン (マットトランスパレント) |
価格 | 866万8000円 |

メディア インフォメーション
RIDERS CLUB 2021年 3月号 掲載
巻頭特集は「春に差がつく! 冬の集中トレーニング」。
■ パート1: 元MotoGPライダー中野真矢さんの「ライディングフォーム固め」 中野さんはサーキット走行で重要な、ライディングフォームをレクチャー。ストレートは全力で伏せ、それからコーナリングへのアプローチ。さらにミニバイクを使ったフォーム固めを解説しています。
■ パート2: 元MotoGPライダー青木宣篤さんの「全力ニーグリップ」 青木さんのプライベートレッスン「アオキファクトリーコーチング」を誌面で再現。 テーマは、ポーツライディングの基本中の基本ニーグリップです。まず理論を説明し、それから実践編へと移行。ヒザより内モモを意識して、バイクと体の「接面」を増やす方法をレクチャーします。
■ パート3: レーシングライダー高田速人さんの「低速でできるステップワーク強化」コーナリングでうまく曲がれないと感じている方は、下半身での荷重コントロールが出来ていないからかも。高田さんが、とっておきの練習方法を伝授します。
第二特集は、「2020 MotoGP Machine」。スズキのミル選手がチャンピオンを獲得した2020年シーズン。スズキが躍動した原動力とは? またヤマハとホンダはどう対策していったのか スズキGSX-RRの開発者には、開発ライダーだった青木宣篤さん。ヤマハYZR-M1とホンダRC213Vの開発者には、それぞ…

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